東証プライム市場とNasdaqは、それぞれ異なる上場基準を持つ世界的に重要な取引所です。以下はその主な違いと特徴です:
主なポイント
-
東証プライム市場:日本国内の投資家向け。厳格なガバナンス基準と収益性要件を重視。
- 株主数:800名以上
- 流通株式時価総額:100億円以上
- 時価総額:250億円以上
- 純資産:連結50億円以上
- 収益性:2年間で25億円以上の利益、または年間売上高100億円以上
- 継続年数:3年以上の事業実績が必要
-
Nasdaq:グローバル市場での資金調達に適した選択肢。柔軟な基準と成長段階に応じた審査。
- 株主数:450名以上(ラウンドロット保有者)
- 時価総額:160億円~850億円以上(基準により異なる)
- 収益性:3年間で税引前利益11億円以上、または他の基準を満たすこと
- 公開株式:125万株以上
- 会計基準:米国基準またはIFRS対応が必要
クイック比較表
要件 | 東証プライム市場 | Nasdaq(グローバル・セレクト市場) |
---|---|---|
時価総額 | 250億円以上 | 160億円~850億円以上 |
株主数 | 800名以上 | 450名以上 |
流通株式比率 | 35%以上(20,000株以上) | 条件に応じて判断 |
純資産 | 連結50億円以上 | 財務状況に応じて柔軟に評価 |
収益性基準 | 利益25億円以上、または売上100億円以上 | 税引前利益11億円以上、他基準も可 |
会計基準 | 日本基準 | 米国基準またはIFRS対応が必要 |
まとめ
- 東証プライム市場は国内市場での信頼性と安定性を重視。
- Nasdaqはグローバルな投資家へのアクセスと成長機会を提供。
あなたの企業に合った市場を選ぶため、財務状況や成長目標を基に検討することが重要です。
1. 東証プライム市場の要件
東証プライム市場に上場するためには、投資家保護と市場の信頼性を確保するため、厳しい基準を満たす必要があります。
上場の基本要件
要件項目 | 基準値 |
---|---|
株主数 | 800名以上 |
流通株式数 | 20,000単位以上、かつ上場株式数の35%以上 |
流通株式時価総額 | 100億円以上 |
時価総額 | 250億円以上 |
純資産額 | 連結で50億円以上(単体ではプラスであること) |
これらに加え、収益性やガバナンスに関連する追加基準も求められます。
収益性に関する基準
企業は以下のいずれかの条件を満たす必要があります:
- 直近2年間の利益合計が25億円以上
- 直近1年間の売上高が100億円以上で、かつ上場時の時価総額が1,000億円以上
コーポレート・ガバナンスの基準
プライム市場に上場する企業には、国際的な投資家との対話を重視し、厳しいガバナンス基準が課されます。具体的には以下が求められます:
- 事業の継続性と収益性を確保する仕組み
- 効果的な内部管理体制の整備
- 適切な企業情報の開示体制
- 会計監査人による「無限定適正意見」の取得
事業継続性の要件
上場申請時点で最低3年以上の事業運営実績が必要です。
さらに、上場後もこれらの基準を維持することが求められます。基準を下回った場合には、改善計画の提出や進捗報告を通じて、一定期間の猶予措置が適用されることがあります。
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2. Nasdaq上場要件
Nasdaqは、企業の規模や成長段階に応じて「グローバル・セレクト市場」「グローバル市場」「キャピタル市場」の各区分に対して異なる上場基準を設けています 。
グローバル・セレクト市場の基準
グローバル・セレクト市場では、以下の4つの基準のいずれかを満たすことが求められます:
基準区分 | 主な要件 |
---|---|
収益基準 | • 直近3年間の税引前利益合計が11億円以上 • 直近2年間それぞれで2.2億円以上 |
キャッシュフロー基準 | • 時価総額が550億円以上 • 直近3年間のキャッシュフロー合計が27.5億円以上 |
時価総額基準 | • 時価総額が850億円以上 • 直近年度の売上高が90億円以上 |
資産・株主資本基準 | • 時価総額が160億円以上 • 総資産が80億円以上 |
これらは、企業の財務的健全性や市場での評価を確認するための多角的な基準です。
共通の上場要件
全てのNasdaq上場企業が満たす必要のある共通条件は以下の通りです:
- 株式公開価格:1株あたり4ドル以上
- 公開株式数:125万株以上
- 株主数:ラウンドロット保有者が450名以上
- マーケットメーカー:3社または4社以上
外国企業向けの特別規定
日本企業を含む外国企業がNasdaqに上場する場合、次の点を考慮する必要があります :
- 財務基準については、国内企業と同じ条件が適用されます。
- コーポレートガバナンスについては、それぞれの国の法規制に基づき、例外的な配慮が認められる場合があります。
- PCAOB(米国公認会計監督委員会)に登録された会計事務所による監査が義務付けられています。
継続開示義務
上場後には、次のような義務が課されます:
- SEC(米国証券取引委員会)への定期的な報告
- 重要事項の適時開示
- 米国会計基準またはIFRSに基づく財務諸表の作成
これらの義務を怠ると、上場廃止のリスクがあります。また、基準を満たしていても、Nasdaqは上場承認に関して広範な裁量権を持つため、定量基準をクリアしただけでは上場が保証されるわけではありません。
市場比較:メリットと課題
先述した各市場の上場要件を基に、東証プライム市場とNasdaqの特徴や課題を整理しました。それぞれの市場には、独自の基準と特徴があります。
主要な基準の比較
以下の表は、東証プライム市場の具体的な数値基準と、Nasdaqの上場要件の概要を比較したものです。
要件 | 東証プライム市場 | Nasdaq |
---|---|---|
時価総額 | 250億円以上 | 成長段階に応じた複数基準 |
株主数 | 800名以上 | ケースバイケースで評価 |
流通株式比率 | 35%以上(20,000株以上) | 状況により判断 |
純資産 | 連結50億円以上 | 財務状況に応じた評価 |
収益性基準 | 直近2年間で25億円以上の利益合計、または年間売上高100億円以上 | 柔軟な財務指標による判断 |
各市場の特徴
東証プライム市場
- 国内投資家からの認知度が高く、日本企業にとって馴染みやすい。
- 上場審査では、企業統治体制や内部管理体制が特に重視される。
- 2023年12月末時点での時価総額は867,406億円に達し、2021年12月比で15.2%増加している。
Nasdaq
- グローバルな投資家へのアクセスが可能で、海外市場での資金調達に有利。
- 企業の成長段階に応じた柔軟な上場基準が設けられている。
- 上場後はSEC(米国証券取引委員会)の基準に基づいた開示義務が求められる。
実務上の考慮点
これらの基準や特徴を踏まえ、企業が上場市場を選ぶ際には以下のポイントを検討する必要があります:
- 財務・開示体制:Nasdaq上場には米国会計基準またはIFRSへの対応が求められ、開示要件も厳しい。
- ガバナンス:東証プライム市場では、日本のガバナンス・コードへの準拠が必要。
- 上場維持コスト:上場後のコンプライアンス対応や開示義務に伴うコストを考慮する必要がある。
それぞれの市場には独自のメリットと課題があり、企業の成長目標や経営資源に合わせた市場選びが重要です。
重要なポイント
以下のポイントは、日本企業が最適な上場市場を選ぶ際に役立つ指針となります。
市場規模と成長率
2023年12月時点で、東証プライム市場の上場銘柄全体の時価総額は約867,406億円に達し、2021年12月と比較して15.2%増加しています。現在、1,657社がこの市場に上場しています。
上場審査の基準
上場審査では、企業価値の持続的な向上と投資家保護の観点から、厳格な基準が適用されます。特に、流通株式比率や時価総額といった定量的な基準に加え、企業統治体制の質が重要視されます。
規制当局との協力
上場審査および関連書類の確認は、規制当局との密接な連携のもとで行われます。これらの協力を通じて、具体的な上場準備のプロセスを進めることが求められます。
上場準備における実務的なポイント
上場準備の過程では、以下のステップが重要とされています:
- ガバナンス体制の整備: コーポレートガバナンスと内部管理体制の構築
- 規制当局との早期対話: 上場規則への適合性を確認
- 開示体制の構築: 正確で完全な開示資料の準備
これらの準備は、市場再編の動向とも密接に関連しています。
将来への期待
東証の市場再編は、市場区分の明確化を通じて企業価値の向上を目指す取り組みです。この変化により、日本企業の国際的な競争力がさらに高まることが期待されています。